造屋の思い

造屋(いたるや)の造(いたる)とは代表の名前からとったものともう一つ、造る(作る)という事を大事にしたいという思いからとったものです。

店舗の約半分を工房スペースとし、「つくる」、「つくりだす」をショップ・コンセプトとしているのもその表れです。造屋に関わる全ての人に金工・彫金という素晴らしい文化の一つに興味を持っていただけたら、知っていただけたら、という思いがあります。

それは文化というものは人の心を豊かにしてくれるからです。

~お客様、ビジネスパートナー様、クラフトマン、彫金に関わる全ての方へ~

この度は造屋(いたるや)の「思い」にご興味をお持ち頂きありがとうございます。早速ですが、あなたはどのようなアイデンティティをお持ちの方なのでしょうか?
「シルバーアクセサリーやジュエリーが大好き」「独立開業して将来自分のお店を持ちたい」「ものづくり、クラフトが好きだ」人それぞれ様々だと思います。少なからず「ものづくり」や「文化芸術事」に興味がある人、またはDIY精神、クリエイティブ精神、独立精神旺盛な持ち主ではありませんか?
以下の目次形式で造屋をご紹介したいと思います。


銀細工職人の店・造屋(いたるや) 代表 村上 造(むらかみ いたる)

造屋が目指すかたち

造屋の目指すかたちは、一人のクラフトマン(職人)が一人のお客様に最初から最後まで“共同作業”で対応するという事です。これはフルオーダーメイドでも修理でもお買上げでも同じです。最初からというのは接客から製作まで商品をお渡ししてからその後もという事です。

こればかりではなく営業や広告等、事務等やることは沢山あります。このような仕事は単純なマニュアル作業ではありません。スキルとマンパワー共に必要です。しかし、人としての成長、学びもとても大きいと考えます。職人と一言でいってもジュエリーが作れればそれで良いという人材であれば、造屋は余り必要としていないかもしれません。

造屋は「有機的な商売」をしたいのです。安く大量に売る為でも無く、銀をグラムいくらで売るのではなく、文化そのものを中心にしたいのです。 文化として定着するには時間が必要です。長く続けるには提供する側、される側がどちらも「苦」「惰性」という低い意識ではなく「喜び」「楽しい」という高い意識(ポジティブな思い)でなければ長続きしません。

双方のクリエイティブ精神を満たし、かつ実社会の中で成り立つ価格帯を実現させるのはそう難しいことでは無いと思います。

大切なのは作る人の経済性(economically)・作品(quality)・使う人の文化性(culturally)がポジティブにバランスする事だと思います。

作る人の経済性[economically]とは、特にものづくり社会の中で起きがちな生産者、職人、労働者が”平等で公平な関係を好まない経営者、または取引相手や経済組織”に搾取されるという実態です。これには様々な要因があります。
経営者や取引相手の製造現場、労働への無知と関心の低さ、生産者側の管理される依存精神、マネージメントへの関心の薄さ、こういった社会問題が強く見られる発展途上国では必ずと言っていいほど女性や子供、弱者が苦しむことになります。
市場の健全な競争価格から余りにもかけ離れ、生産者側が貧困に陥るような”安値取引”は長期的には生産が衰退していき社会の弱体化につながります。結局、経営者側である支配層、富裕層にもその負の波紋は及んでいきます。

作品[quality]は通常「economically」が高まると比例してクオリティも高くなります。
人間は、衣食住の安定した生活があって始めて創造的になれ、他人を思いやれるからです。加えて、自身がその生産活動に誇りを感じ、豊かな生活を送る時に最も高いクオリティが発揮されると思います。
しかし、社会が経済的に円熟しデフレーションに傾いた時など、企業、ブランドは”短期的な利益”を追求しはじめ、作られるモノのクオリティは低下していきます。
生産者自身が誇りを持てるようなものづくり精神がある背景には一体何が必要でしょうか。その根幹には必ず伝統的な技術や歴史、精神があります。それは利益の為の素材選定、利益の為の広告、利益の為のコスト優先、とは真逆に位置するものです。このような生産者の意に反したストレスフルな環境で生産活動を続けていると、生産者とそれに関わる人々は疲弊していき、やはり長期的に見るとものづくり社会の衰退に繋がります。

使う人の文化性[culturally]とは、「economically」と「quality」が成立しているモノは必然的に魅力があり、表面的ではありません。それは人々が長期的に触れたくなるようなものであり、結果として「文化」に発展するものです。アンティークなボタンや小物、置物や家具、そして歴史の深い伝統的な建築物・・・と人々を長きに渡り惹き付ける魅力あるものはあげたらキリがありません。
そのような魅力あるモノや創造物に共通している機能的な部分に”修理して直せる、直して使える”という要素が一番大きいのではないでしょうか。それが長く使い、子や孫に受け継ぎ、という文化に繋がっていくのです。極端な例かもしれませんがビニール傘を修理しようとする人はいません。また子や孫にもビニール傘を受け継がせようとする人もいません。しかしビニール傘は確実に誰かが作っています。
道端に捨てられたビニール傘1本にも必ずその生産者がいるのです。

現在の宝飾、アクセサリー業界

現在国内でのジュエリー業界、アクセサリー業界のほとんど、約90%以上(私の知る限りですが)逆輸入で生産されています。つまり海外の経済発展途上国(BRICs)や東南アジアの人件費の低い国で大量生産し国内で安く卸す、売るというスタイルです。
著名なブランドが商標、ロゴマーク権利等を貸して他社が生産するライセンスビジネスの実態もこのスタイルです。
今の日本や先進国は宝飾に限らず衣料、食物なども大量輸入に頼り、自国では生産者が減り、いわゆる産業の空洞化がおきています。昨今世界的な食物原材料高騰で各国農業が苦境に立たされ急速に衰退する自体が起きています。原因は「大量に安く」をモットーにする思考(アメリカ等の国土の広い国)にありますが、本当に悪いのはこれらの国々でもありません。目先の手軽さや利益に乗じてしまった各国、先を見通して考えない「無知」が原因なのです。

近年の環境破壊や自然災害、原発事故等もそうですが「痛い思いをして知る」時代でもあったと思います。過去の過ちと同じ事を繰り返していては進歩がありません。「大量生産、大量消費」「物質主義」「利益第一」の経済成長第一主義時代は終わりを迎えようとしているのです。これからの時代は「有機的」「協和的」「精神的」な時代が求められてくると思います。
また、無機的なものと有機的なものがより二極化されてくる傾向もあるでしょう。もちろん前者も否定はしません。IT産業やコンピュータ、大量生産技術も発展するでしょう。要は、特定の人が苦しまないシステム、バランスが大事なのだと思います。

造屋は後者の有機的な方を選択したいと考えています。あくまで中心になる原動力はクラフトマン(職人)であり、マンパワー(人)、創造力(イマジネーション)です。

知識、経験全くない人

知識、経験が無いというのも程度問題になりますが、全く触ったことも聞いたことも無いという方はまず、趣味や教室で体験することをお勧めします。造屋は学校でもなく、教室でもありません。プロが仕事をする場です。そのプロとして本気で仕事をするのであればやはりツール(道具)は必要不可欠です。ツールを揃える費用も必要でしょう。
この業界は特にツールがありすぎて困るということは無い位、ツールがないと話にならない世界です。「全くの素人が1日2日でナントカできる世界ではない」と言うことは強く言っておきます。
「最低10年」と言われる世界でもありますから、ある程度はツールに親しみ、材料に親しみ、知識、道具は持つ必要があります。また本気で将来この道や独立開業を考えている人だったら、それくらいは当たり前でしょう。それも無しにいきなり当店に来る人も中には居ますが、逆に「本当に本気なの?」と疑いたくなります。
それでも知識、経験一切無くともやってみたい!というのであればそれは相当な努力と忍耐、そして情熱が必要であることはご承知と思います。

成功するには

「将来のイメージを達成する」ことが「成功」というのであれば、あとはどうやってそこへ到達するかです。まずこの第一歩目である「イメージを持つこと」が何よりも大切です。イメージとは自分がそこへ行って(造屋へ行って)何をするのか、何を学ぶのか、何を目指すのか。出来るだけハッキリ持つ(周りの人に言えるくらい)ことが大切だと思います。目指す目標は高ければ高いほど良いのではないでしょうか。
目標でも、夢でも、志でも良いのです。それが「成功」の定義になるからです。「自分がどうしたいのかを明確に持つ」事と「自分のしたい事に正直にあきらめず真直ぐ向かう」このたった2つの事ができればあなたは100%成功します。

「自分がどうしたいのかを明確に持つ」には、自分との対話、内観、そして決心が必要です。自分って一体どうしたいんだろう?簡単なようで誰もが悩み通る道ですよね(笑)
「自分のしたい事に正直にあきらめずに真直ぐ向かう」には自分が楽しくてワクワクすることを大切にして、余り難しいことは考えずに進むことです。しかし楽しいことばかりでなく現実的な壁や難題を乗り越える「あきらめない力」も必要です。
月並みな言葉ですが、やはり失敗を恐れない柔軟な心。また「失敗してももう一回やればいいや」くらいの「楽しむ心」が一番重要なんじゃないかなと思います。
誰の言葉か忘れましたがこんな言葉があります。
「愚者は言う。成功への一番の近道はどれだろう・・・。賢者は言った。私は遠回りし失敗を重ねることでその経験が成功をもたらした・・・」

実際のしごと

仕事は大きく分けて2つあります。「作る」ことと「売る」ことです。「作る」ことはシルバーアクセサリーやジュエリーの修理ができたり、お客様のオーダーメイド注文通りに作れる「技術力」です。
しかし、この「作る」なかにも複雑に「この修理はいくらで取るのか」や「このオーダーメイドでこの方法だと採算はあうのか」といった知識はもとより商売感覚が必要なところがあります。また一言で「売る」と言っても、お客さんの「この商品で素材をコレで、ここをこうしたらいくら位で、納期はどれくらいで出来るの?」という質問に出来るだけ正確に応えられなければ成り立ちません。

そうです両方兼ね備えた「職商人」になる必要があるのです。これまでの「作り手は工房で黙って作ってりゃ良いんだ」的な日本独特の職人文化の習性もあってか「作れるけど接客とかそういうのはチョット・・・」というものづくりの人達は結構多いのです。これが今の冷えきった宝飾業界を生んだ原因でもありますから・・・。
「売る」ことは確かに超カンタンでは無いかもしれません。営業や広告~接客から販売ひっくるめて「売る」ということですから。これも「案ずるより産むがやすし」頭で考えると色々やることがあって大変そうですが実際一つ一つやってみるとこれほど「楽しい」事は無いと分かります。
なにせ自分で作った商品をみんなに紹介する、そして興味を持ってくれたら薦めるということだけなのですから。
売る事の楽しさを分かると共にお客様のジュエリー、アクセサリーに対する生の声を聞くことで自分が今後どういったものを作るか、という事に対しても最良のアドバイスになるからです。

給料、収入について

給料面は単純明快です。
「作って、売る」というシンプルな世界ですから、当然作れなければ、売れない。売れなければお金はもらえない。という事です。
「厳しい世界」というより「当たり前の事」です。 この「当たり前」のことで経済が成り立ち、世界が成り立っているのです。どんなに大きな企業でも、小さな個人事業でも事業にとってマイナスの方へ進めばすぐに倒産するのと同じです。それが経済法則です。
だけどちょっと考えてみてください。
自分で考え出し、楽しみながら、悩みそして学びながら、作った商品を自分のお店で売り、毎日様々な人と出会い、生計を立てる毎日の生活の素晴らしさを。自分のアイディアやクリエイティブ精神を大いに働かせ、そして成長しながら日々を送る素晴らしさを。
その全ての「労力」が世の中一般働いている人とそう大差なく、事業にとって良い方向に進んでいれば、それなりのお金が手に入ります。これも経済法則です。

代表村上造、自身について

さて、色々偉そうなことを言ってきましたわたくし代表の村上ですが、「実際アンタはどうなのよ」と。聞こえてきそうな疑問に応えなければなりませんので、僭越ながら私自身の事をお話させて頂きます。
最初は趣味で彫金を始めました。20歳前後の時、当時プータローだった私は将来すべき事も見つからないまま 自らの悶々とした苦しみの中でこの彫金と出会いました。一つの「手作り指輪キット」で作った簡易な指輪を研磨して光っていく様に、自分の中にも救いの光が見えました。その時直感で「これだ。これしかない」と思えました。心がワクワクしたのです。
それからすぐバイトで貯めた貯金全て(200万円)を使い、道具、銀の材料などを一気に買い揃えました。基本的な技術を学びにカルチャースクールへ行き 自分でも毎日のように触り、正にバイトと彫金独学の日々が続きました。
次第にそこそこ作れるようになってくると周りの友達、知合いなどに安く売ったり、あげたりしていき 「本格的にこれで食っていきたい」と思うようになりました。

でもどうすればよいか全く分かりませんでした。当時、今の私のように自分の店を持って経営している人と知り合えるチャンスも無く ただただ色々な事を考え、悩みました。 まずは工場に就職しようか・・・とか。弟子入りしようか・・・とか。いやでも、自分でお店をやりたいし・・・。考えれば考えるほど不安になっていました。自分には何も無かったからです。
人に自慢できるような学歴も、職歴も無い。経験もないし、人脈も無い・・・技術だってまだまだ未熟・・・。原宿で何件ものアクセサリー屋さんに作品を持っていっては門前払いを受けたりとかもしました。とにかく自分には当たって砕けるしか無かったのです。
そして近所のインディアンジュエリー屋さんに半ば強引に道具、彫金机ごとを持ち込みました。
修理とかリフォームをさせてもらいながら「お店の経営ノウハウ」を見て盗んだのです。今思うと、経営といってもそんなに大したことはやっていなかったのです。 当たり前ですよね同じ人間がやっているんだから。でもその経験があって自分にもできるんだ!って思えたのです。ただただ切羽詰まってたんですね多分・・・。そんなハングリーで何も無い若造ですからずいぶん周りに迷惑かけたと思います。

その後も百貨店やデパートなどの催事(今の外販です)で出店販売し、家では作るの毎日です。ここでは接客、販売の難しさをずいぶん学びました。値段安くしすぎて売ってたりとか、なんでこんなに寝ないでやってがんばってるのにあんまり儲からないんだろう?・・・とか。でも自分の商品が売れてお金になるっていうのはすごく楽しいし、嬉しいのです。 大変だったけど応援してくれる人も居るし、色んな人に支えられて今があるんだなあとしみじみ感じます。
そんなこんなでお金も貯まってきて、ついに念願のお店を出すことになりました。ここでも初めての事だらけ、いろいろ壁にぶち当たりました・・・。

そしてお店を出して早15年、趣味で始めてから20年以上経ちました。今もまだまだ勉強しなくてはならないし、学ぶこともイッパイあります。道具だって欲しいものが沢山あります。
だからまだあなたと同じ駆け出し同然なんです(笑)

今私は結婚もしていますし子供、家庭もあります。大金持ちとは言えませんが標準的な豊かな生活を送っています。フリーター時代に体験したつらい労働関係の仕事や余り面白くない仕事をしていたときと今を比べてしまうと、こんな幸せすぎる生活を送っていていいの?と感謝の日々です。
こんな私でもここまで来れて、今こうして充実した毎日を送れているのです。あなたに「私と同じことが出来ない」ということは100%無いとだけは言っておきます。 100%絶対にです。
しかし私が言えるのはここまでです。
実際に選択し、行動を起こすのはあなた自身ですから。

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