宝珠ペンダントの総打出し
2025.06.03

宝珠ペンダントの総打出し完成風景。
「宝珠」という初めてのモチーフでのペンダント製作でした。
いなり玉ともいうらしく古くは葱の花や生命力そのものを表した形、紋らしいです。
この宝珠ペンダントのメイキングムービーを撮ってみましたのでご覧ください。

宝珠ペンダントの総打出し製作メイキング①
この面白い形を「総打出し」で製作しました。
打出しってなんぞや?と普通は思いますよね。一枚の平板を矢坊主鏨(タガネ)、なめくり鏨、ナツメ鏨、そばよせ鏨(これらの鏨も全て作ります)で叩いて立体的に仕上げていくというなんとも原始的で根気と根性が必須かつ無茶苦茶時間もかかりコスト的に非効率なプリミティブワークなのです。しかしながら、この打出しでしか出ない「味」が確かにあります。明治、大正期に作られた金工文化で帯留めや刀の鍔など骨董市でも見かける事が出来るアンティークモノはほぼこの打出しが用いられています。近代の綺麗な印刷と江戸期の絵師、彫師、刷り師が作成した浮世絵との比較と言えば分かりやすいでしょうか。

宝珠ペンダントの総打出し製作メイキング②
主に「打出し加工」の一部始終はこの②です。
鍛金で地金が締められるので独特の硬さ、バネ、光沢が生まれます。あとこれはなんと表現すればよいか作り手側の勝手な感覚になりますが対象に愛着が芽生えてくると言いましょうか。初めは平面だったものが鏨で何千回と叩く内に段々と立体的に成長しハッキリとその形に成り、主張してくる様に生命誕生とも言え可愛く思えてくるのです。しかしながら、いやはや動画に納めるのが大変で…撮りながらだと叩く振動やカメラが邪魔で肝心のペンダントが良く見えずで苦心しました。苦労の甲斐をご覧頂ければ幸いでございます(笑)

宝珠ペンダントの総打出し製作メイキング③
今回は裏板も打出しで作る、正に総打出しでした。表部分の凸に対して裏板は平面でロウ付けして輪郭で切り落とす事が多いと思います。裏も凸です。凸と凸を合わせました。ストロベリークオーツに光を通すために裏は宝珠いなり玉型に抜いています。

ヤニ台。ピッチボールとも言います。松脂と植物油と砥の粉を混ぜて作ります。各比率を微妙に変える事でベタつき感や硬さを調節します。バーナーで温めて柔らかくして対象を固定させます。このヤニ。対象が温かい物にはくっつき、冷たい物には離れるという性質を持ちます。昔の人は良く考えたものです。

このカザフスタン産のストロベリークオーツをお持ち込み頂いての製作でした。
今はもう閉山していて取れないとお客様仰っていました。
過去に製作したオーダーメイドで同じく打出し技法を用いたものは以下になります。
・No.184:狛犬の打ち出しペンダント
・No.165:ムシュフシュの打ち出しペンダント
・No.141:咆哮する虎
あとは、このフェザーなんかもボディは打出し成型と鏨彫り製作しています。
・No.222:天然血赤珊瑚のホワイトフェザー・ジッパーペンダント
まあ中々理解は難しいと思いますが、少しでもこれが「打出し」かと分かって頂ければ幸いに思います。
まあなんせ面倒。時間と手間がかかる伝統技法。ですがそれなりの味がある粋な技法と捉えて頂ければ嬉しいのです。
手間と時間が掛かるって事は先立つ物もそれなりに。とも捉えて頂ければ本望でございます🙇🏻
Making by ITALU-YA